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舞台挨拶(詳細版)『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』

『攻殻機動隊ARISE』は士郎正宗氏の原作コミックを押井守、神山健治らの『攻殻機動隊』シリーズの最新作。
世界のアニメファンから注目を集めるなか、『border:3』の総監督には、本シリーズの制作スタジオである「プロダクション I.G」を支え続けた黄瀬和哉氏。
シリーズ構成・脚本には、冲方丁氏を迎えるなどキャスト陣を一新。本作品では、公安9課こと攻殻機動隊の立ち上げを巡る物語が描かれるだけではなく、
シリーズを通して謎に包まれてきたヒロイン・草薙素子の恋が描かれている。
そんな『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』が、2014年6月28日に上映初日を迎え、草薙素子役の坂本真綾や、恋人のホセ役を演じる鈴木達央、黄瀬和哉総監督、シリーズ構成・脚本の冲方丁氏、製作総指揮の石川光久氏ら
主要な制作スタッフによる舞台あいさつが、東京・新宿バルト9で華やかに行われたので、ここではその一部始終を紹介する。

■舞台挨拶詳細
– まず黄瀬和哉総監督からひと言お願いします。
黄瀬監督 – 今日劇場上映の初日を迎えて、午前中は雨が降っていたりして少し心配していましたが、本日は沢山の方々にご足労頂き誠にありがとうございました。

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– 続いてシリーズ構成・脚本の冲方丁さん。
冲方丁 – 初日に大勢の方々に、いらっしゃって頂き感激です。宜しくお願い致します。

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– そして草薙素子役の坂本真綾さん。
坂本真綾 – 今日は本当にありがとうございます。『border:3』では、これまでの『border:1』『border:2』とは違う、新しいARISEの挑戦的な部分をご覧頂けると思います。
– さて今回の『border:3』演じられた感想をお願いします。
坂本真綾 – 実は今回、「素子の恋愛を描くエピソードがあるよ」と言う話を聞いて「ついにきたか!」と楽しみしていました。
けれど反面、実際に台本のト書きにある「素子のすねる表情」とか、想像できない色々びっくりするような素子の姿が沢山書かれていて、このセリフどうやって言うのだろうと、当初はどうやって演技をしていけばいいのか分からなくなって、一旦、台本を閉じてしまいました。(笑)

そしてその後、映像ができ上がってから、あらためて台本を開いてみたのですが、実際の映像をみると、素子の細かな動きや表情、恋人のホセとの距離感、また セリフがない場面でのふたりのイメージ映像もとても美しかったので、後は収録現場でホセ役の(鈴木)達央さんの出方をみてみようと思いました。

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– ホセ役を演じられた鈴木達央さんは如何でしたか?
鈴木達央 – 当初オーディションで設定資料と一部のセリフを頂き、その時点で恋人役であるのは分かっていたのですが、元々攻殻ファンだったので、実際、どういう恋人役を演じたら良いのか悩みました。
そこで過去の攻殻作品をあらためて読み返したり、鑑賞したりして、素子の恋人ということは「きっと、ものすごい勢いで捨てられるのかなぁ」(笑)、「サラッとして扱いの役なのかなぁ」と思って、さして重要な役ではないのかもと考えていました。
けれど完成した台本を読んでみると「ホセ、素子を少しだけこづく」「照れる素子」「面白そうに見ているホセ」など(笑)、これまででは想像できない知らないト書きやセリフが沢山あって、僕も知らないホセと素子とのシーンに正直戸惑いました。
思った以上の重い役と言うか、これまで素子が触れてきた相手役とは雰囲気が違うなと感じ、本来は早々にリハーサルVTRを見て、絵を確認したりするチャンスがあるのですが、暫くの間は、台本だけを集中して読み込んで、役作りに集中しました。

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坂本真綾 – 達央さんと前にお仕事をご一緒した時は、割とコミカルな役をされていたのに、今回は大人っぽく知的なホセ役。実際には「素子と同等に対峙する役」なんて相当な男だと思うんです(笑)。

– 坂本さん、自信満々のドヤ顔でおっしゃいましたね(笑)。
坂本真綾 –達央さん。どんな演技をされるのかぁ、本当に甘えちゃっていいのかなぁって思っていたら、1回目のテストの場面で、フェロモン120%で来たんです。これは、「や・る・な」と思いました(笑)。
その場面で、素子役の私は、どうやってこの人(ホセ)と会話していけば良いのか、一瞬して分かっちゃったんです。
きっと普段9課の仲間と居る時とは違うモードに入れる相手なんだと思ったんですね。
そうしたら内心、もの凄く恥ずかしくなっちゃって…(笑)、これは私が照れちゃったら、この映画を見てくださる方も恥ずかしくなっちゃうと考え、ふたりきりのアフレコだったこともあって、その場の雰囲気に浸りきって愉しみ、達央さんのフェロモンに元気を頂きました(笑)。

– すでに試合後の談話のようになっていますが(笑)、鈴木さんはどういう演技を心掛けていましたか?
鈴木達央 – 役作りの過程で色々考えていった時、とにかく「素子に寄り添える存在」でありたいと考え、どんな演技をしたら「素子がホセに寄り添ってくれるかなぁ」と想いを巡らせました。

そこで自分が考える「ホセ」という役作りを全力で作っていき、本番では「音響監督の指示を仰ごう」と考えたのです。
で、最初にやった芝居で、監督から「ちょっとフェロモンが多いんじゃねぇか?」と言われたりしましたが(笑)、自分の中で想像していた役作りが『border:3』のなかで少なからず大きく外れたものではなかったので、手応えを感じ、少し安心しました。

– 今回ヘビーなストーリーを作られた黄瀬和哉総監督、ラブストーリーの意図とは?
黄瀬監督- えーと、それは副産物と言うか…。

– え?でも普通、ラブストーリーの場合、殆どの場合それがメインですよね?
黄瀬監督 – 実は単純に「脚」を描きたいな。というアイディア出しをしまして…。

冲方丁 – 黄瀬監督から、企画会議の場面で「脚が書きたい」と言われ、みんな「脚かぁ」って頭が真っ白になっちゃった(笑)。
それで監督にその心は何ですか?と聞いたら「やったことのないことをやろうよ。攻殻機動隊のラブストーリー」という話だった。
それでみんな「はぁ?」ってまた頭が真っ白になっちゃった。
結局、あらかじめスタッフが持ち寄っていた様々な映画のプランが全部、無に帰しました(笑)。それで脚にまつわるラブストーリーって言うと人魚姫しかないと思って…。

– そこで、それを思いつくのは凄いですね。
冲方丁 – 人魚姫は脚を得た後、歩きながら痛みを感じるというテーマがあるので、脚の痛みを伏線にしたらどうですかって言ったら、「それだったら脚の痛みで着衣を破けるね」と(笑)。このヒト(黄瀬和哉総監督)は本当にぶれないヒトだなぁ感じました(笑)。
でも擬体で生々しい恋愛ストーリーを描くなんて、もう作画上ではつらくて、死ぬかと思いました(笑)。

– そうなると相手役が注目されますね。
冲方丁 – 素子に合法的に触れられる役割と言えば、やっぱり医師だろうと考えて、今回の擬体技師ホセの役を考えました。

– でもホセの年齢感をどう考えるか課題ですね。
鈴木達央 – 彼の信念や夢を考えると、大人っぽくも思えるけれど、ある面、子どもっぽい要素もある。
よ くよく考えると攻殻機動隊というのは擬体がテーマになっているので、このホセという役に関して、その脳は少年なのか、はたまた老成された人物の脳なのか、 そもそも事前に頂いている年齢感で演じて良いのか疑問に感じて、迷路に迷い込んだのです。それでどうしようか悩んだときに、過去の作品を見直すことで自分 なりの芯を見つけていくことができました。

– こうやってお話を伺っていると、やっぱり鈴木達央さんの声はやっぱり色っぽいですね。
坂本真綾 – 達央さんですか?そうですね。
冲方氏 – めっちゃ上から目線(笑)
坂本真綾 – ホセ役は色っぽさも必要ですが、どこかに青さも欲しい役。そんな達観したホセというキャラが達央さんの声が入ったことで完成されました。本当に声優さんって凄いなぁってあらためて感じました(笑)。

鈴木達央 – 『border:3』では、皆さんの知らない素子を存分に見て頂きたいと思います。そして素子の生き方にひとつの区切りをつけたホセという男の生き様も見て欲しい。そういう部分も気にとめて頂き、何度も見かえして本作品を愛してやってください。

坂本真綾 – 『border:3』で、素子も「意外に公私混同しちゃうんだな」「結構隙だらけだな」「ただのオンナだな」と思えたこと。それが凄く素敵なことだなと。
どんな素敵なヒトも色んな経験があって、過去が合って出逢いがあって、そしてああいう人間になっていくんだなと思うと励みになるような気がするし、もっと、もっと素子という存在が好きになれたと思います。

– 一方で、今回ストーリーの軸になるもう一人のキャラクターがトグサ。ようやく9課のメンバーが全員そろいましたね。
冲方氏 – ラブストーリーが主軸のなか、生身のトグサと並べることで素子の恋愛観に逆説的にリアリティが出た。トグサは正しい事しか言っていないのに、素子がそれにイライラしまくる。そこも素子の新しい心情として描けたのではないかと思います。

– 公安9課の完成に向けて、映画の最後の場面も未来に含みを持たせる内容ですね。
石川光久 – 25年前に士郎正宗がコミック版の連載をスタートさせ、押井守版の劇場版があり、神山健治版の『STAND ALONE COMPLEX』があった。これらを上書きしていけばこんなに苦労しなかったと思います。
しかし本作はゼロからのスタートとなって『border:1』『border:2』『border:3』と来て、『border:4』は本当に我々が永年温めていた完結版です。

実は『border:4』の脚本は、時間軸で言えば従来の攻殻に最も近く、ファンに最も受け入れられ易いものとして、当初の段階では先に完成していました が、あえて優れた作品作りを目指し『border:1』『border:2』『border:3』と綴ってきました。今回の『border:3』までをご 覧頂く度に深みが増す『border:4』は、攻殻ファンに喜んで頂ける真の攻殻機動隊らしい作品になっています。是非ともご期待ください。

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『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』は6月28日から2週間限定で全国公開。

シリーズ完結となる第4章『攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone』は、9月6日公開の予定。

揃った9人のメンバーがどんな活躍を見せてくれるのか、ついに動き出す「公安9課」に期待が高まる。

 

『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』PV

 

フォト:益子、櫛田 テキスト:fiomax

 

 

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